規制は強まるのか? 営農型太陽光発電をめぐる国内の規制動向

May 05, 2023

  2023年3月で、農林水産省による営農型太陽光発電に関する通知が発出されてから10周年を迎えました。国内では営農型太陽光発電/ソーラーシェアリングの普及が進んできた一方で、農業生産をおろそかにするような事例が目立つようになったこともあって、規制強化に向けた議論が動き出しています。今回は、そうした営農型太陽光発電の制度をめぐる最近の動きをまとめてみます。


  営農型太陽光発電の「不適切な事例」の増加

  2023年2月に開催された、農地法制の在り方に関する研究会で営農型太陽光発電が取り上げられ、その際に農村振興局から下記のようなデータが提示されました。それによると、実際に設置された営農型太陽光発電設備のうち、全体の18%で営農に対する支障が生じており、その73%が単収減少であるとされています。

  

  また、単収減少が生じている事例のうち5割超は地域の平均的な単収の0~20%未満と記されており、営農そのものが満足に行われていない事例が一定数存在することを示してています。

  このデータで留意すべきなのは、335件存在するとされる単収減少事例の詳細です。そもそも農業を行う意志がない事例もあれば、設備設計や営農計画に無理があったということもあるでしょう。制度的な対策を考える上でも、そうした対象事例の精緻な分析が提示される必要があります。

  また、営農型太陽光発電/ソーラーシェアリングは、事業開始の入り口の時点で「そもそも太陽光パネルの下で農作物が十分に育つのか」という懸念が指摘されてきましたが、自然災害等で単収減少した事例を除いた87%の事業では十分な収穫量が確保されている点も注目されるべきでしょう。全体として見ると、上記の資料は営農型太陽光発電において農業生産が一般的には支障なく行えることを示すデータとも言えるはずです。

  同研究会では地方自治体からの事例報告もあり、茨城県つくば市や徳島県三好市の農業委員会からは、地域内における営農状況が不適切な事例への対応に苦慮している状況について説明した上で、制度の見直しの必要性が述べられました。こうした一連の状況を受けて、営農型太陽光発電における不適切な事例を減らしていくための規制強化が検討されつつあります。


  規制強化と同時に議論すべきポイント
  
農業と共存する再生可能エネルギーである営農型太陽光発電の趣旨から逸脱し、発電事業を優先しその範囲で農業生産を行うという事例が増えつつあるなかでは、一定の規制を設けていくこともやむを得ないと言えます。

  FIT制度下で農地転用の抜け穴として営農型太陽光発電を利用する動きがあることは疑いなく、2020年度からの特定営農型太陽光発電の導入は残念ながらそうした動きを一部後押ししてしまったように思いますし、発電事業のための営農型太陽光発電事業を押し出す企業が大手にも増えつつあるのは大きな懸念です。また、不適切な事例の対応に苦慮する地方自治体の現場から、是正指導や改善のための法的根拠を求める声にも応えていく必要があります。

  今後、営農型太陽光発電の制度を整え直していくに際して、課題となるのは「営農型太陽光発電を何のために活用していくのか」という政策的な方針の不在です。持続可能な農業の達成、農業・農村振興という本来の目的の他、昨年から始まった環境省の脱炭素先行地域事業でも地方自治体の計画に取り入れられるなど、地域・社会の再生可能エネルギー電源としても期待されています。

  4月15日から16日にかけてG7気候・エネルギー・環境大臣会合が開催され、これまで以上の気候変動対策目標を掲げ、温室効果ガスの削減を進める方針がコミュニケ(共同声明)の中で示されています。化石燃料に大きく依存する国内農業のエネルギー転換を進め、脱炭素化を図ると共に、かつて農業・農村が担ってきた社会に食とエネルギーを安定供給していく役割を取り戻していくといった、営農型太陽光発電の普及によって目指して行く未来をまず議論しなければなりません。

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